躁鬱(双極性障害)とADHDがあり、HSPという言葉で表されるような繊細さもある彼女と付き合う中で、僕は何度も「これはどの特性によるものなんだろう」と考えてきました。
元気に出かけた翌日に長く眠る。約束の時間に間に合わない。忘れ物をする。話が途中で別の方向へ飛ぶ。予定を立てても、当日の体調によって変わる。
理由が分かれば、僕もイライラせずに受け止められると思っていました。でも、実際に一緒に過ごしてみると、彼女の行動を「躁鬱だから」「ADHDだから」「HSPだから」ときれいに分けることはできませんでした。
僕に必要だったのは、すべての原因を当てることではなく、目の前で何が起きていて、二人のどちらが困っているのかを見ることでした。
この記事では、躁鬱×ADHD×HSPの彼女と付き合う中で戸惑った日常と、僕自身の考え方がどう変わったのかを体験談としてお伝えします。
※この記事は診断や治療方法を示すものではありません。「躁鬱」は一般に使われる呼び方として用いていますが、医学的な名称は双極性障害です。また、症状や特性の現れ方は一人ひとり異なります。
LINEやSNSの動きに不安になった体験については、双極性障害の彼女がSNSだけ更新する理由|LINEが来ないときの受け止め方で詳しく書いています。
躁鬱×ADHD×HSPの彼女と付き合って、最初に戸惑ったこと
元気な日と何もできない日の差が大きかった
彼女には、よく話して次々に行動できる日もあれば、起き上がることさえつらそうな日もありました。
元気な彼女と会った直後は、次の予定も普段どおり楽しめるように思えます。しかし数日後には、同じ人とは思えないほど動けなくなっていることがありました。
付き合い始めたころの僕は、その差を理解できませんでした。「この前はできたのに、今日はどうしてできないの?」と、前にできたことを基準に考えていたからです。
でも、昨日できたことが今日もできるとは限りません。調子の波がある相手にとっては、「前はできた」が励ましではなく、できない自分を責める材料になる場合もあるのだと気づきました。
楽しく出かけた翌日に長く眠ることもあった
一緒にいる間は楽しそうだったのに、翌日になると長い時間眠っていることもありました。
僕から見ると、前日は元気でした。たくさん笑っていたし、自分から行きたい場所を話すこともありました。そのため、「本当は無理をしていたのかな」「僕と出かけたから疲れさせたのかな」と考え込んだこともあります。
ただ、楽しいことと疲れないことは同じではありません。本人がその場を楽しんでいても、人混みや音、移動、会話などから多くの刺激を受け、あとから休息が必要になることはあります。
翌日に眠っている姿だけを見て、前日の時間まで否定する必要はない。そう考えられるようになってから、僕も必要以上に自分を責めなくなりました。
遅刻や忘れ物が続くと、僕もイライラすることがあった
一方で、理解しようと思っても、僕の気持ちが追いつかない出来事もありました。
約束の時間になっても来ない。必要なものを忘れる。同じ話をもう一度確認する。そんなことが重なると、「またか」と感じてしまいます。
あるときは、待ち合わせに2時間ほど遅れてきたことがありました。事情があると分かろうとしても、待っている間に僕の予定と気持ちが削られていき、自分の中で限界を感じました。
遅刻した理由を病名だけで説明しても、待たされた僕のつらさが消えるわけではありません。彼女を責めたくない気持ちと、「僕の時間も大切にしてほしい」という気持ちは、どちらも本音でした。

分かろうとする気持ちと、つらいと感じる気持ちは両方あっていいと思います。
「これは躁鬱?ADHD?HSP?」と考えるほど分からなくなった
双極性障害、ADHD、HSPは同じものではありません。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、双極性障害は躁状態とうつ状態を繰り返す病気と説明されています。
同サイトの発達障害(神経発達症)の解説によると、ADHDは神経発達症に含まれ、不注意や多動性・衝動性などの特徴があります。一方、HSPは、研究では感覚処理感受性(SPS)という気質的な特性の高い人を示す言葉として扱われています。
この違いを知ることは大切です。ただし、知識を得ても「遅刻したからADHD」「長く眠ったから双極性障害」「疲れたからHSP」と、目の前の行動を一つずつ診断できるわけではありません。
同じ行動でも理由は毎回同じとは限らない
たとえば、同じ「起きられない」という状態でも、気分の落ち込み、前日の疲れ、睡眠リズム、薬の影響など、さまざまな可能性があります。恋人の僕には、その場で理由を判断できません。
遅刻についても同じでした。時間の見積もりが難しかったのか、準備の途中で別のことに気を取られたのか、体調が悪かったのか。それとも、病気や特性とは別の理由だったのかもしれません。
一つの理由に決めつけると、違ったときに話がすれ違います。僕は「どうしてまた遅れたの?」と追及するより、「今日は何が難しかった?」と聞く方が、二人で次を考えやすいと感じました。
「できない」のか「やらない」のか外からは分からない
僕が苦しかったのは、彼女が「できない」のか、単に「やらない」のか分からなかったことです。
何でも病気のせいにすれば、僕がすべて我慢しなければならないように感じます。反対に、本人の甘えだと決めれば、責める気持ちが強くなります。
でも、恋人である僕が診断のような線引きをしても、二人の問題は解決しません。理由が分からないときでも、困った出来事について話し合えるか、一方だけが我慢していないかを見ることはできます。
病気と甘えの間で悩んだときの考え方は、双極性障害の彼女を「甘えじゃないか」と思った僕の本音|支え方と距離感に悩んでにもまとめています。
病名で説明しようとすると、目の前の彼女が見えなくなる
病気や特性について知るほど、彼女の行動がすべて症状に見える時期がありました。
でも、彼女には体調とは関係なく好きなことや苦手なことがあります。機嫌がいい日もあれば、単純に疲れている日もあります。僕と考えが合わないことも、恋人同士なら当然あります。
特性を知ることは、相手を理解する手がかりにはなっても、相手のすべてを説明する答えにはなりません。
「双極性障害の人ならこうするはず」と見るのではなく、「彼女は今どう感じているのか」を確かめる。その方が、病名だけを見ていたころより会話がしやすくなりました。

僕が付き合う中で変えた3つの考え方
原因探しより「今、何に困っているか」を見る
以前の僕は、出来事が起こるたびに原因を探していました。しかし、正しい原因が分からなくても、今困っていることは確認できます。
- 彼女は外出する体力が残っているのか
- 僕は予定の変更に対応できるのか
- 二人のうち、どちらかだけが我慢していないか
- 今日決めなくてもよいことではないか
「どの特性が原因か」ではなく、「今日はどうすれば二人とも無理が少ないか」と考えるようになると、答えの出ない悩みに消耗する時間が減りました。
予定どおりにいかない前提で余白をつくる
予定が変わるたびに落ち込むのは、僕の中で「計画どおりに進むこと」を成功だと決めていたからでもありました。
そこで、大切な予定の前後を詰めすぎない、出発前に一度だけ確認する、難しいときの代案を決めておくなど、最初から少し余白を考えるようにしました。
もちろん、すべてを彼女に合わせるという意味ではありません。僕に外せない予定がある日は、そのことも先に伝えます。予定が変わる可能性と、僕が守りたい時間の両方を扱うことが必要でした。
調子がいい日に予定を詰め込みすぎない
彼女が元気そうだと、「今のうちにいろいろ楽しみたい」と僕も思います。でも、その日の勢いで予定を増やすと、あとから疲れが出ることがありました。
調子がいい日に動けるだけ動くのではなく、まだ元気に見えるところで休む。次の日まで含めて予定を考える。これは彼女のためだけでなく、僕が「昨日は元気だったのに」と戸惑わないためにも役立ちました。
ただし、恋人が本人の行動を管理することはできません。僕にできるのは、無理をさせない選択肢を出し、彼女の希望も聞くことまでだと思っています。

遅刻や忘れ物を「性格の問題」だけで考えなくなった
忘れることと大切に思っていないことは別だと考える
約束を忘れられると、「僕との予定はその程度なのかな」と感じることがありました。出来事ではなく、そこに「大切にされていない」という意味をつけていたのだと思います。
しかし、忘れたという事実と、僕を大切に思っていないことは同じではありません。会っているときの言葉や態度から愛情を感じることもたくさんありました。
一度の行動だけで愛情全体を判断しない。そう意識することで、僕の中で生まれた不安と、実際に起きた問題を分けやすくなりました。
それでも困っていることは我慢せずに伝える
忘れることと愛情は別だと考えても、遅刻や予定変更によって僕が困る事実は残ります。理解したから我慢しなければならないわけではありません。
僕は「普通は時間を守るでしょ」と責めるのではなく、「連絡がないまま待つと、僕も次の予定を決められなくてつらい」と、自分に起きていることを伝える方がよいと感じました。
相手の事情を理解することと、自分が困ったことを伝えることは両立できます。
約束を守らせるより、守りやすい方法を二人で考える
「次から気をつけて」だけでは、同じことが起きる場合があります。気持ちの問題にせず、守りやすい形に変える方が現実的でした。
- 集合時間と出発時間を分けて確認する
- 前日か当日に短く予定を確認する
- 遅れそうなときに送る連絡を簡単にする
- 待てる時間と、その後どうするかを先に決めておく
これは彼女を監視するためのルールではありません。彼女が失敗しにくくなり、僕も終わりの見えないまま待たなくてすむようにするための相談です。
HSPと言われる繊細さと付き合う中で気づいたこと
楽しい予定でも疲れることがある
僕は以前、楽しそうにしているなら大丈夫だと思っていました。でも、楽しさと刺激の多さは別です。
人が多い場所、長い移動、明るい照明、大きな音、たくさんの会話。本人にとって楽しい外出でも、さまざまな刺激が重なれば疲れることがあります。
彼女が疲れたときに「楽しんでいなかったの?」と受け取らず、「楽しかったけれど疲れたんだな」と考える。この二つを同時に認めることが、僕には大切でした。
人混みや長時間の外出のあとに休む時間をつくる
外出のあとに予定を重ねず、一人で休める時間を残す。途中で座れる場所を選ぶ。帰る時間を固定しすぎない。僕たちには、こうした余白が必要でした。
休むことを予定の失敗にしないのも大切です。早く帰っても、行きたかった場所を一つ楽しめたなら、その日の外出には意味があります。
翌日まで一緒に過ごす必要がないときは、それぞれの時間に戻ることもあります。離れて休むことは、気持ちが離れたこととは違います。
「せっかく来たんだから」と無理をさせない
時間やお金をかけて出かけると、僕も「もう少し楽しみたい」と思います。でも、「せっかく来たんだから」という言葉は、疲れを伝えにくくさせることがあります。
途中で帰る、行く場所を減らす、何もしないで休む。そうした選択肢を残しておく方が、彼女も限界になる前に気持ちを伝えやすくなります。
ただ、毎回僕が予定を変更して不満をためるなら、それも健全ではありません。二人で出かける日だけでなく、僕が一人や友人と予定どおり楽しむ日も必要だと思っています。
理解しようとするうちに、僕自身が疲れてしまったこともある
「病気だから仕方ない」で我慢を続けるのは違った
彼女を責めたくなくて、僕は「病気だから仕方ない」と考えることが増えました。その言葉に救われた場面もあります。
でも、何に対しても使うようになると、僕の寂しさや怒りまでなかったことになります。約束が続けて変わっても、自分の生活が崩れても、我慢するのが正しいように思えてしまいました。
事情を責めないことと、起きた問題をそのままにすることは違います。彼女に事情があるように、僕にも仕事や睡眠、守りたい予定があります。
理解することと、自分を犠牲にすることは違う
彼女を理解したいと思うほど、自分の都合を後回しにしていた時期がありました。急な誘いに合わせ、予定の変更を受け入れ、僕が疲れていてもできるだけ応えようとしていました。
最初は優しくできても、無理が続けば心の中に不満がたまります。そして限界になったとき、目の前の出来事以上に強く怒りたくなります。
長く一緒にいたいなら、相手を支えることと同じくらい、自分の生活を守ることも必要でした。

優しくできなくなる前に、自分を休ませる
以前の僕は、限界まで我慢してから距離を取りたくなっていました。でも、それでは彼女にも理由が伝わらず、突然突き放されたように感じさせてしまいます。
疲れ始めた段階で「今日は自分の時間にする」「明日は仕事に集中する」と伝える。すぐに答えの出ない問題は、その日に解決しようとしない。友人と過ごしたり、自分の好きなことをしたりして、恋愛から意識を離す時間もつくる。
距離を取るのは、罰を与えるためではありません。また落ち着いて話せる自分に戻るための時間です。
支える側が抱え込みすぎない考え方は、双極性障害の恋人との向き合い方|アドラー心理学でラクになった3つの考え方でも詳しく紹介しています。
躁鬱×ADHD×HSPでも、最後は「彼女自身」を見る
特性を知ることは、相手を決めつけるためではない
双極性障害やADHDについて知ったことで、彼女の行動を悪意だけで見なくなりました。HSPという言葉を知ったことで、僕には小さく思える刺激でも、負担になる可能性を考えられるようになりました。
知識は、僕の見方を広げてくれます。ただし、「この特性があるから、きっとこう思っている」と結論を出すためのものではありません。
分からないときは本人に聞く。本人にも分からないときは、急いで答えをつくらない。その余白を持つことも、相手を一人の人として見ることだと思います。
できることと苦手なことは、その人によって違う
同じ診断名があっても、苦手なことや必要な配慮は人によって違います。調子が悪いときに一人でいたい人もいれば、そばにいてほしい人もいます。
予定を細かく決めると安心する人もいれば、変更できる方が楽な人もいます。一般的な「正しい接し方」をそのまま当てはめるより、二人の間で起きたことを振り返る方が役立ちました。
僕たちに合う方法も、体調や生活の変化によって変わります。一度決めたルールを守り続けることより、合わなくなったときに話し直せる関係の方が大切だと感じています。
同じ双極性障害という診断名があっても、その人の性格や得意なこと、生き方まで同じになるわけではありません。
これは、双極性障害を公表している著名人について調べたときにも感じました。病気と向き合いながら活動を続ける人もいれば、休養を選んだ人、自分の経験を言葉にして発信している人もいます。
そうした一人ひとりの生き方を見て僕が考えたことは、双極性障害を公表した有名人5人|その生き方から僕が考えたことにまとめています。
僕もまだ分からないことがあるから、決めつけずに付き合っていく
ここまで書いても、僕には分からないことがたくさんあります。彼女の気持ちを理解できない日もあれば、自分の余裕がなくて優しく受け止められない日もあります。
それでも、「躁鬱だから仕方ない」「ADHDだから約束を守れない」「HSPだから疲れやすい」と、最初から答えを決めないようにしています。
彼女の事情を聞き、僕の気持ちも伝え、今の二人にできる方法を考える。それでも難しいときは少し休む。この繰り返しが、僕にとって無理をしすぎない付き合い方です。

全部を分かることより、分からないまま決めつけないことを大切にしています。
まとめ|病名も知りながら、目の前の相手を理解する
躁鬱×ADHD×HSPの彼女と付き合う中で、僕は次のように考えるようになりました。
- 元気に見えた翌日でも、休息が必要なことはある
- 遅刻や忘れ物と、愛情の大きさは分けて考える
- 一つの行動を病気や特性だけで決めつけない
- 相手を責めなくても、自分の困りごとは伝えてよい
- 支える側の仕事、睡眠、生活も同じように守る
双極性障害、ADHD、HSPについて知ることには意味があります。知識がなければ、できないことを本人の性格や愛情の不足だけで判断してしまうかもしれません。
ただ、知識だけで目の前の人を説明しきることもできません。「特性がある人」ではなく、調子の波も、得意なことも、苦手なこともある彼女として見ること。それが、僕が付き合う中で一番大切だと感じたことです。
僕もこれから迷うと思います。それでも、原因を決めつけて相手を責めるのでも、自分だけが我慢するのでもなく、二人にとって続けられる関係を考えていきたいです。
双極性障害の彼女との恋愛全体で、しんどかったことや距離感については、双極性障害の彼女と付き合って感じたこと|しんどかった時と無理をしない向き合い方にもまとめています。

