「双極性障害の恋人との恋愛って、やっぱり大変?」
そんなふうに思って、このページにたどり着いた方もいるかもしれません。
僕も、双極性障害の彼女と付き合い始めたころは、どう接すればいいのか分かりませんでした。楽しそうに将来の夢を話していたと思ったら、別の日には起き上がることさえつらそうにしている。楽しみにしていた予定が変わることもあれば、連絡が途切れて不安になることもありました。
当時の僕は、病気について詳しくなれば、彼女の行動をすべて理解できると思っていました。
でも、付き合い続ける中で気づいたのは、知識だけでは目の前にいる彼女の気持ちまでは分からないということです。それどころか、病名を通して彼女を見ることで、本人の性格や考えまで決めつけてしまうこともありました。
この記事では、「双極性障害の恋人あるある」ではなく、彼女との恋愛で僕が誤解していた5つのことを、実体験をもとに振り返ります。
- 双極性障害の恋人との関係に悩んでいる
- 相手を理解したいけれど、どう接すればよいか分からない
- 支えたい気持ちと、自分のしんどさの間で揺れている
- 実際に付き合っている人の体験を読みたい
そんな方にとって、二人の距離感を考えるきっかけになればうれしいです。
※この記事は、双極性障害のある彼女と付き合っている僕の体験談です。症状や性格、心地よい関わり方は人によって異なります。病状の判断や治療については、本人の主治医などの専門家へ相談してください。
双極性障害の彼女との恋愛で、僕は「理解したつもり」になっていた
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、双極性障害について、活動的になる躁状態と、憂うつで無気力になるうつ状態を繰り返す病気と説明されています。状態が切り替わる間隔も、数か月の場合や数年の場合など、さまざまです。
参考:国立精神・神経医療研究センター「双極性障害(躁うつ病)」
病気について知ることは、相手を理解するための大切な手がかりになります。僕も、知識があったからこそ、彼女のつらさを「気持ちの問題」だけで片づけずに済んだ場面がありました。
交際の中で感じたよかったこと、大変だったこと、無理をしない支え方をまとめて知りたい方は、双極性障害の彼女と付き合うには|メリット・デメリットと無理しない支え方もあわせて読んでみてください。
ただ、知識をそのまま目の前の彼女に当てはめると、「これは躁状態だ」「これはうつ状態だからだ」と、僕が勝手に答えを出してしまいます。
病気を知ることと、彼女の気持ちを知ったつもりになることは違いました。ここからは、僕がどんな誤解をして、どう考え直したのかを書いていきます。
誤解1|感情の変化をすべて双極性障害で説明できると思っていた
元気な日と動けない日を見て、僕が決めつけていたこと
ある日、彼女が「ガールズバーのオーナーになる」と、店の構想を楽しそうに話してくれたことがありました。
「内装は白を基調にして、女性が安心して働ける店にしたい」
僕が週末に行くラーメン屋のことくらいしか考えていなかった横で、彼女はずっと大きな未来を描いていました。その発想の細かさと話すときの表情に、僕は素直に驚きました。
一方で、別の日には深く落ち込み、布団から出ることさえ難しそうにしていました。
当時の僕は、その変化を見るたびに「今は躁なのかな」「今度はうつなのかな」と考えていました。病名で整理できれば、分からないことへの不安が少し軽くなる気がしたからです。
でも、僕に見えていたのは、その日の彼女の一場面だけでした。
外から見ただけでは、彼女の内側までは分からなかった
元気に見える理由も、動けない理由も、病気だけで説明できるとは限りません。睡眠不足、仕事の疲れ、人間関係の悩み、その日の出来事など、僕の知らない事情が重なっていることもあります。
本人にも、自分の状態をうまく説明できない日があります。そんなときに僕が「これは病気のせい」と決めつけても、彼女を理解したことにはなりません。
今は、分からないことを無理に判定するより、話せそうなときに聞くようにしています。
- 今日はどんな感じ?
- 話を聞いたほうがいい?
- 今は一人で静かに過ごしたい?
- 僕にできることはある?
答えを求める質問ではなく、彼女が選べる聞き方を意識しています。返事がないときは、それ以上聞かずに待つこともあります。
以前は、LINEが数日未読になると、SNSまで確認して「嫌われたのでは」と考えていました。でも、未読から分かるのは、まだ返信がないということだけです。
SNSは更新されているのに自分への返信がないときの受け止め方は、双極性障害の彼女がSNSだけ更新する理由|LINEが来ないときの受け止め方で詳しく書いています。
返信がない理由や待つ日数、追いLINEを控えたい理由については、双極性障害の彼女からLINEが返ってこないとき|何日待つ?理由と対処法にまとめています。
病気について知ることは大切。でも、その知識で彼女の気持ちまで決めない。それが、最初に僕が気づいたことでした。
誤解2|彼女の才能は、気分の波から生まれると思っていた
10分で完成したパワーポイントに驚いた夜
彼女が将来の話をしていたとき、僕は冗談半分で「今後のキャリアプランをプレゼンにまとめてみてよ」と言ったことがあります。
すると、およそ10分後には本当に資料が完成していました。
タイトルは「今後のキャリアプラン及び人生設計について」。内容は想像していた以上にきちんとしていて、ところどころに入る言葉のセンスも絶妙でした。
僕は笑いながらも、「こんな発想を短い時間で形にできるのはすごい」と本気で感心しました。僕にはない視点を次々に見せてくれる彼女と一緒にいると、自分の価値観が広がっていくように感じます。
病気ではなく、彼女自身の魅力として考えるようになった
以前の僕は、こうした彼女の発想力や行動力を、気分の波と結びつけて考えていました。
しかし、それでは彼女の才能まで病気で説明することになります。「双極性障害だから創造的」「気分の波があるから才能が出てくる」と簡単に結びつければ、つらい症状まで魅力的なものとして扱ってしまいかねません。
彼女の発想、言葉の選び方、資料を形にする力は、病気の「おかげ」ではなく、彼女自身が持っている魅力です。
もちろん、普段より活動量が大きく増えたり、睡眠が極端に少なくなったりするなど、本人や周囲が変化を感じることはあります。ただ、その状態を恋人の僕が診断したり、治療の必要性を判断したりすることはできません。
今は、病気について心配することと、彼女の個性を尊敬することを分けて考えています。
このとき彼女が作ったパワーポイントは、noteの記事で紹介しています。
誤解3|デートらしいデートがないと、恋愛らしくないと思っていた
映画や旅行へ行けなくても、二人の時間は残っていた
付き合い始めてしばらくの間、僕たちはいわゆる「デートらしいデート」をほとんどしていませんでした。
映画、水族館、旅行、夜景ドライブ。そんな王道の恋愛イベントとは、あまり縁がありませんでした。
それは、計画しても突然体調が悪くなりドタキャンになるのが常だったからです。
その代わり、家でYouTubeを見ながらソファでゴロゴロしたり、「今日は動きたくないね」と言い合ったりして過ごしました。
彼女が突然「料理を作ろう」と立ち上がり、作ることに集中する横で、僕が後片づけを担当することもあります。「私たち、いいコンビだね」と笑ったあと、またキッチンが散らかるところまで、いつもの流れです。

夜の仕事をしている彼女から、職場であったことや人間関係の愚痴を聞く夜もあります。最初は僕まで重たい気持ちになっていましたが、彼女は途中で言葉を面白く言い換えたり、突然変顔をしたりします。
二人で「それは大変だったね」と話しながら、最後には少し笑える。問題がなくなるわけではありませんが、その時間に救われることがありました。
ただ、笑っているから元気だと決めつけないことも大切でした。彼女が気を遣って明るく振る舞っている場合もあるからです。笑わせてもらうことを当然にせず、今日は話したいのか、静かに過ごしたいのかを確かめるようにしています。
何をしたかより、どんな気持ちで過ごせたか
以前の僕は、予定どおりに会えないことや、出かけられないことを、愛情の薄さと結びつけていました。
でも、会えた日に何をしたかより、その時間を二人が安心して過ごせたかのほうが、僕たちには大切でした。特別な場所へ行かなくても、料理をして、愚痴を聞いて、一緒に笑った記憶は残っています。
一方で、体調を理解しようとすることと、僕の寂しさをなかったことにすることは別です。
楽しみにしていた予定が流れれば、僕も残念です。同じことが続けば、「また誘っても断られるかもしれない」と怖くなることもあります。
今は、その場で責めるのではなく、二人とも落ち着いているときに「楽しみにしていたから寂しかった」「次はどう決めようか」と話すようにしています。
彼女の体調を尊重することと、僕の希望も大切にすることは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。二人の希望を話せることも、恋愛の一部だと思うようになりました。
誤解4|支えるとは、服薬や生活を見守り続けることだと思っていた
「薬は飲んだ?」と聞くことに迷っていた
彼女との関係で、僕が特に迷ったのが服薬についての声かけでした。
薬は彼女の治療を支える大切なものです。一方で、恋人から毎日のように「薬は飲んだ?」「病院には行った?」と確認されれば、見守られているというより、管理されているように感じることもあると思います。
以前の僕は、飲み忘れを防ぐことまで自分の役割だと考えていました。声の調子や聞くタイミングを細かく気にして、「うまく飲んでもらわなければ」と力が入っていたこともあります。
でも、それでは彼女と僕が、恋人というより管理する人と管理される人のようになってしまいます。
双極性障害の治療では、状態に応じて薬の使い分けが必要になるため、薬については主治医へ相談することが大切だとされています。恋人の僕が薬の必要性や飲み方を判断することはできません。
参考:国立精神・神経医療研究センター「双極性障害(躁うつ病)」
僕が決めるのではなく、彼女が望む手助けを確かめる
今は、彼女の調子が比較的落ち着いているときに、どこまで声をかけてほしいかを確認するようにしています。
- 飲み忘れが心配な日は声をかけてほしいか
- 通院前に予定を確認してほしいか
- 話だけ聞いてほしいのか
- 今は何もせず、そっとしておいてほしいのか
同じ彼女でも、日によって望むことは変わります。前に喜ばれた支え方が、今日も助けになるとは限りません。
だから、手を出す前に「何か手伝えることはある?」と聞く。断られたら、すぐに説得しようとしない。僕にできないことは、できないと伝える。
支えることは、彼女の治療や生活を僕が肩代わりすることではありません。彼女が自分で決める余白を残しながら、一人では難しい部分を、求められた範囲で手伝うことだと考えるようになりました。
うつ期に何をすればよいか迷う場合は、行動を増やすだけでなく「何をしないか」という考え方もあります。僕が実際に意識したことは、躁うつの彼女の支え方|うつ期のパートナーにできる「しない」優しさ10選にまとめています。
もちろん、命や身体の安全に具体的な危険を感じるときは別です。その場合は恋人一人で抱え込まず、家族や医療機関、相談窓口などにつなぐ必要があります。
誤解5|距離を取ることは、彼女を見捨てることだと思っていた
彼女のペースに合わせ続けて、僕も疲れていた
彼女と付き合っていることを話すと、「大変そう」と言われることがあります。
以前、知り合った人から「もっと別の人がいるんじゃない?」と言われたこともありました。その人は、彼女の病名だけを聞いて、僕たちの関係を判断していたのだと思います。
確かに大変だな、自分のためを考えると「別れた方がいいのかも」と思っていました。
一方で、当時の僕は反発するように、「それだから好きなんだ」とも考えていました。
でも、今はこの言い方も違うと思っています。僕が好きなのは、「双極性障害の彼女だから」ではありません。
人に気を遣いながら言葉を選ぶところ。独特な発想で僕を笑わせてくれるところ。料理に夢中になったあと、片づけを僕に任せて笑うところ。疲れた夜に全力の変顔を見せてくれるところ。
病名だけでは説明できない、そうした彼女自身に惹かれています。
一方で、「理解できる恋人でいたい」と思うほど、僕は彼女の希望を優先するようになっていました。急な誘いにもできるだけ応え、予定が変わっても何も言わず、連絡がなければ心配しながら待つ。
それを愛情だと思っていましたが、続けるうちに僕の仕事や睡眠まで落ち着かなくなることがありました。疲れたままでは、彼女にも穏やかに接することができません。
相手の課題まで背負わず、自分の心も守る考え方については、双極性障害の恋人との向き合い方|アドラー心理学でラクになった3つの考え方でも紹介しています。
離れるためではなく、二人とも無理をしないための距離
距離を取ることは、彼女を無視したり、罰として連絡を絶ったりすることではありません。
僕が仕事に集中する。眠る時間を守る。急な誘いに応えられない日は断る。彼女が一人で過ごしたいときは、必要以上に理由を聞かずに待つ。
僕たちにとっての距離感は、「ずっと近くにいる」か「完全に離れる」かの二択ではありません。
お互いが不安にならないくらいの間隔で連絡を取ることが大事だと思います。

- 話したいときは近づく
- 休みたいときは待つ
- どちらかが苦しくなったら少し離れる
- 落ち着いたら、また話し合う
そのときの彼女の状態だけでなく、僕の余裕も見ながら調整します。一度決めた連絡や会い方のルールも、合わなくなれば話し直します。
距離を置くことや、どこまで支えるか迷った体験は、双極性障害の彼女を「甘えじゃないか」と思った僕の本音|支え方と距離感に悩んでにも詳しく書いています。
僕たちは、特別な記念日や高級なディナーがなくても、「髪を切ったよ」「今からシャワーを浴びる」といった何でもない話をしています。
近すぎて苦しくならず、離れすぎて不安にもならない。そんな距離を最初から見つけられたわけではありません。今も失敗しながら、二人に合う形を探しています。
まとめ|理解するとは、病名で決めつけずに確かめ続けること
双極性障害の彼女との日々は、いつもドラマチックなわけではありません。むしろ、地味で静かな時間のほうが多くあります。
その中で、僕が誤解していた5つのことを振り返ります。
- 感情の変化を、病名だけですべて説明しようとしていた
- 彼女の才能や魅力まで、気分の波と結びつけていた
- デートの回数や予定どおりに会えることを、愛情の基準にしていた
- 支える僕が、服薬や生活まで管理すべきだと思っていた
- 距離を取ることは、彼女を見捨てることだと思っていた
病気を知ることは大切です。でも、知識が増えたからといって、彼女の気持ちをすべて理解できるわけではありません。
僕は今も、彼女のことを完全に理解できているわけではありません。分からない日もあれば、支え方を間違える日もあります。
それでも、病名で答えを決めず、彼女の言葉を聞くことはできます。そして、彼女だけでなく、支える僕の生活や気持ちも守ることができます。
どちらか一人が我慢するのではなく、二人とも苦しくならない距離を確かめ続けること。
それが、双極性障害の彼女と付き合って、僕が気づいた恋愛の距離感です。
おまけ|彼女が作ったパワーポイントをnoteで紹介しています
記事の中で触れた「今後のキャリアプラン及び人生設計について」の資料は、noteに掲載しています。彼女らしい発想と言葉のセンスを、ぜひ読んでみてください。


